Inkscapeには、ノードをスカルプト加工できる機能があります。 スカルプトとは『彫像する』とか『彫刻する』という意味であり、押し込んだり引っ張り出す感覚で形作ることができます。 どちらかといえば、彫刻というよりは粘土細工に近いでしょうか。
スカルプト加工とは、移動させたノードの周囲のノードにも影響を与えて移動させる機能のことです。 近いノードは大きな影響を受け、遠くなるにつれて受ける影響は小さくなります。
スカルプト加工は、Blenderのような3Dグラフィックスを制作するソフトウェアでは今や当たり前の機能ですが、2次元の画像を制作するInkscapeでも便利な機能です。 Blenderではプロポーショナル編集と呼ばれます。
では、スカルプト加工を行ってみましょう。 今回はテキストをスカルプト加工し、溶け落ちている最中のように変形させます。
まずは、新規ドキュメントを開き、次にテキストツールに切り替えます。
上図のように画面左部にあるツールボックスからテキストツールを選択します(またはキーボードのT(またはF8)を押します)。
続いて、フォント・フォントスタイルおよびフォントサイズを指定します。
上図のように画面上部にあるツールコントロールでフォント・フォントスタイル・フォントサイズを指定します。 文字が見やすいよう、大きめのフォントを指定するのがオススメです。
では、何でもいいのでテキストを入力します。
上図のようにテキストを入力します。
では次に、入力したテキストをパスに変換します。 スカルプト加工するためには、パスに変換する必要があります。 シェイプやテキストのままではスカルプト加工はできません。
上図のように画面上部のプルダウンメニューの"パス(P)" -> "オブジェクトをパスへ(O)"を実行します(またはキーボードのSHIFT + CTRL + Cを押します)。
上図のようにテキストからパスに変換されます。 テキストではなくなったため、テキストカーソルが消えています。
なお、テキストをパスに変換すると、字ごとにパスのオブジェクトが作成されます。 つまり、現状6つのパスがあるということです。
また、6つのパスは、グループ化されて1つにまとめられています。 バウンディングボックスが1つしか表示されていないのはそのためです。
グループ化された状態だとノードの編集が面倒なので、グループ化を解除しましょう。
上図のように画面上部のプルダウンメニューの"オブジェクト(O)" -> "グループ解除(U)"を実行します(またはキーボードのSHIFT + CTRL + Gを押します)。
上図のようにグループ化が解除されます。 バウンディングボックスが6つ表示されているのがわかります。 バウンディングボックスが6つ表示されているということは、パスは6つとも選択されているということです。
では、本題のノードのスカルプト加工の説明に入ります。 パスが6つとも選択されている状態のまま、ノードツールに切り替えましょう。
上図のように画面左部にあるツールボックスからノードツールを選択します(またはキーボードのN(またはF2)を押します)。
上図のように表示が変化し、ノードとセグメントが表示されます。 なお、6文字分のノードが表示されているのは、グループ化が解除され、かつ全てのパスが選択されているためです。
では次に、全てのノードを選択します。 選択されているノードしかスカルプト加工の影響を受けないためです。
キーボードのCTRL + Aを押して全てのノードを選択してください。
上図のように全てのノードを選択します。
これでスカルプト加工の準備が整いました。 では、溶け落ちるように加工しましょう。 今回は "T" の下端の左側のノードを中心に溶け落ちかけているように加工します。
"T" の下端の左側のノードをALTキーを押しながらマウスの左ボタン()で下方にドラッグします。
上図のようにALTキーを押しながらノードをドラッグします。 赤色の矢印はドラッグの動きを表しています。
上図のようにドラッグで移動させたノードの周囲も影響を受けています。 距離が近ければ大きく、離れるにつれて影響が小さくなっています。
ノードツールのままでは見づらいので、選択ツールに切り替え、さらに選択を解除しましょう。
上図のように見やすくなりました。 "T" を中心に溶け落ちるように変形しています。
Inkscapeでは、ノードをスカルプト加工することができます。 粘土細工のように、押し込んだり引っ張り出す感覚で形作ることができます。
なお、スカルプト加工できるのはパスのみであり、シェイプやテキストはパスに変換してからでないとスカルプト加工はできません。
スカルプト加工の対象となるのは選択されているノードのみです。 未選択のノードは、スカルプト加工の影響は受けません。