前の記事の『スウォッチで色やグラデーションを共有する』からの続きです。 引き続き、スウォッチの利用例について紹介します。
では次に、単一色ではなく線形グラデーションをスウォッチで共有してみましょう。 なお、単一色の場合とは異なり、ちょっと分かりづらい動作をします。
まずは、スウォッチの利用を中止する必要があります(登録済みのスウォッチの色を単一色から線形グラデーション/放射グラデーションに変更することはできません)。
上図のように『フィル』タブの[単一色]ボタン()を選択します。
次に線形グラデーションに切り替えます。
上図のように『フィル』タブの[線形グラデーション]ボタン()を選択します。
これで線形グラデーションに切り替わりましたので、さらにスウォッチに切り替えましょう。
上図のように『フィル』タブの[スウォッチ]ボタン()を選択します。
上図のようにスウォッチの一覧に "1023" という名前のスウォッチが追加されます。 また、一覧の左列のスウォッチの色がグラデーションになっているのがわかります。
では、追加されたスウォッチの名前を "My_Gradientfill" に変えましょう。
上図のようにスウォッチの名前を "My_Gradientfill" に変更します。
ではここで、スウォッチの一覧の下のボタンに注目してください。
上図のように[グラデーションの複製を作成]ボタン()と[グラデーションを編集]ボタン(
)が表示されています。
この2つのボタンは、グラデーションをスウォッチに追加したため出現しました。
なお、[グラデーションを編集]ボタン()はグラデーションツールに切り替えるためのボタンであり、このボタンを押してもこの画面でグラデーションの詳細設定はできません。
[グラデーションの複製を作成]ボタン()は名前の通りグラデーションを複製するためのボタンです。
複製されたグラデーションを利用することで、他のオブジェクトとは連動しないようにすることができます。
では、矩形のフィルも "My_Gradientfill" に変更しましょう。 つまり、楕円のフィルとグラデーションを共有します。
上図のように矩形のシェイプを選択します。
では、フィルを "My_Gradientfill" に変更します。
スウォッチの一覧で "My_Gradientfill" を、マウスの左ボタン()でクリックします。
上図のようにスウォッチの一覧から "My_Gradientfill" を選択します。
上図のように矩形のシェイプのフィルがグラデーションに変わります。 楕円のフィルと同じグラデーションになりました。
では、スウォッチの一覧に注目してみましょう。
上図のように "My_Gradientfill" の利用数(#)が 2 に、利用されなくなった "My_Fill" の利用数(#)が 0 となりました。
これで、矩形のシェイプと楕円のシェイプでグラデーションを共有できました。 続いて、共有中の "My_Gradientfill" のグラデーションの色を変更してみましょう。
グラデーションツールに切り替わりますので、線形グラデーションの始点である四角ハンドルを選択してください。
上図のように始点である四角ハンドルを選択します。
では、始点を選択したままフィル/ストロークダイアログに注目してください。
上図のように[単一色]ボタン()が選択されています。
グラデーションの始点や終点を選択すると、このように[単一色]ボタン(
)が選択されている状態になります。
ただし、塗りの種類が単一色に切り替わったわけではありませんので安心してください。
では、[単一色]ボタン()が選択された状態のままで始点の色を青色に変えてみましょう。
上図のように色の入力欄の R G B A にそれぞれ 0 0 255 100 を入力します。
上図のように矩形のグラデーションの始点の色が青色に変わりました。 ただし、問題があります。 楕円のフィルのグラデーションは色が変わっていません。
スウォッチは色を共有できる機能なのに、なぜ連動していないのでしょうか。 選択ツールに切り替えて確認してみましょう。
上図のように画面左部にあるツールボックスから選択ツールを選択します(またはキーボードのS(またはF1)を押します)。
上図のように矩形のシェイプのフィルはスウォッチ()のままです。
ただし、"My_Gradientfill" ではなく新たに作成された "1127" という名前のスウォッチが選択されています。
つまり、楕円のシェイプとの色の共有が失われています。
なぜそうなったのかというと、おそらく不具合ではなく仕様です。
Inkscapeでは、スウォッチを利用することで複数のオブジェクトで色(単一色)やグラデーション(線形グラデーション / 放射グラデーションで利用)を共有できます。
ただし、スウォッチ()を利用せずに、線形グラデーション(
)や放射グラデーション(
)を利用してもグラデーションは共有できるのです。
線形グラデーション()や放射グラデーション(
)を利用してグラデーションを共有している場合も、今回の操作を行うと色の共有は解除されます。
スウォッチ(
)を利用している場合でも、同じ感覚で操作ができるようにするために、動作を合わせているのではないかと思います。
スウォッチ()を利用していても・していなくてもグラデーションの色の変更の操作を同じにするための配慮なのかな、と思っています。
では、矩形のフィルを "My_Gradientfill" に戻しましょう。
スウォッチの一覧で "My_Gradientfill" を、マウスの左ボタン()でクリックします。
上図のようにスウォッチの一覧から "My_Gradientfill" を選択します。
上図のように矩形のシェイプのフィルが元に戻りました。 では、スウォッチの一覧に注目してみましょう。
上図のように "My_Gradientfill" の利用数(#)が 2 に、利用されなくなった "1127" の利用数(#)が 0 となりました。
では、再びグラデーションの色を変更します。 今回は、矩形と楕円が連動するように色を変更します。
グラデーションツールに切り替わりますので、線形グラデーションの始点である四角ハンドルを選択します。
上図のように始点である四角ハンドルを選択します。 では、今回もフィル/ストロークダイアログに注目してみましょう。
上図のように今回も[単一色]ボタン()が選択されています。
前回と同じですね。
ではここで、グラデーションの共有を保つための大切な操作を行います。
上図のように『フィル』タブの[スウォッチ]ボタン()を選択します。
上図のように『フィル』タブで "My_Gradientfill" が選択されていることを確認し、色を緑色に変更します。 色の入力欄の R G B A にそれぞれ 0 255 0 100 を入力します。
上図のように矩形のシェイプのグラデーションの始点が緑色になります。 さらに、楕円のシェイプも連動しています。
では、選択ツールに切り替えて "My_Gradientfill" の状態を見てみましょう。
上図のように画面左部にあるツールボックスから選択ツールを選択します(またはキーボードのS(またはF1)を押します)。
上図のように "My_Gradientfill" のグラデーションの始点が緑色になっています。 また、利用数(#)も 2 となっています。 矩形のシェイプと楕円のシェイプでグラデーションが共有できていることが確認できました。
このようにグラデーションの始点・終点・中間点を選択した後に[スウォッチ]ボタン()を押すことでグラデーションの自動的な複製を防ぐことができます。
では、もう一度グラデーションの色を変更します。 今回も矩形と楕円が連動するように色を変更しますが、操作方法は変えます。
グラデーションツールに切り替わりますので、線形グラデーションの始点である四角ハンドルを選択します。
上図のように始点である四角ハンドルを選択します。 では、今回もフィル/ストロークダイアログに注目してみましょう。
上図のように相変わらず[単一色]ボタン()が選択されています。
困ったものです。
ではここで、グラデーションの自動的な複製の機能をオフにします。
上図のようにツールコントロールの[関連するすべてのグラデーションを変更するためにグラデーションをリンク]ボタン()を押します。
これで、グラデーションの自動的な複製の機能がオフになりました。
ではこの状態のまま、始点の色を赤色に変えましょう。
上図のように[単一色]ボタン()が選択された状態のまま、色の入力欄の R G B A にそれぞれ 255 0 0 100 を入力します。
上図のように矩形のシェイプのグラデーションの始点が赤色になります。 さらに、楕円のシェイプも連動しています。
このように、ツールコントロールの[関連するすべてのグラデーションを変更するためにグラデーションをリンク]ボタン()をオンにすることでグラデーションの自動的な複製の機能をオフにすることができます。
長くなってきましたので、ここで一区切りします。 続きは次の記事を参照ください。
スウォッチに登録済みの色は、種別(単一色 / グラデーション)を切り替えることはできません。
一度、[単一色]ボタン()を選択するなどして、スウォッチの利用を中止する必要があります。
その後、線形グラデーション(
)か放射グラデーション(
)に切り替えてから、再度スウォッチ(
)に戻します。
グラデーションをスウォッチに登録すると、[グラデーションの複製を作成]ボタン()と[グラデーションを編集]ボタン(
)が表示されるようになります。
[グラデーションの複製を作成]ボタン()は、名前の通りグラデーションを複製するためのボタンです。
同じグラデーションを利用している他のオブジェクトの色に影響を与えなくない場合は複製してから色を修正しましょう。
[グラデーションを編集]ボタン()を押すと、グラデーションツールに切り替わり、画面上部のツールコントロールもグラデーションツール用に変化します。
また、選択中のオブジェクトにグラデーションハンドルが表示されるようになります。
スウォッチに登録されているグラデーションの色を変更すると、自動的にグラデーションが複製されてしまいます。 結果、他のオブジェクトとの色の共有は失われます。
グラデーションの始点・終点・中間点を選択した後に[スウォッチ]ボタン()を押すことでグラデーションの自動的な複製を防ぐことができます。
または、ツールコントロールの[関連するすべてのグラデーションを変更するためにグラデーションをリンク]ボタン()をオンにすることでも、グラデーションの自動的な複製を無効にすることができます。