この記事では、『スウォッチ』の機能について紹介します。 スウォッチは、すでに説明したカラーパレットと同じく色見本の機能です。 ただし、カラーパレットとは異なり、オブジェクト間で色を共有することができます。
なお、スウォッチに登録できるのは単一色とグラデーション(線形グラデーション / 放射グラデーションで利用)のみです。 メッシュグラデーションとパターンはスウォッチには登録できません。
カラーパレットを使って色を指定すると、カラーパレットの色の情報がオブジェクトに転写されます。
一方、スウォッチを利用して色を指定すると、スウォッチとの関連付けが行われます。 オブジェクトに設定されるのは、スウォッチのどの色を参照しているかという情報になります。 例えば、スウォッチの "My_Color" という色を参照している、という具合です。
そのためスウォッチの "My_Color" の色を変更すると、"My_Color" を利用している全てのオブジェクトの色が連動して変化します。 そのような仕組みのおかげで、オブジェクト間で色を共有することができるというわけです。
では、スウォッチを使ってみましょう。 まずは、2つのシェイプを用意します。
上図のように色の異なる矩形と楕円のシェイプを作成します。 矩形・楕円ともにフィルもストロークも単一色で塗っています。 また、ストロークは見やすいように太くしています。
続いて、選択ツールに切り替えます。
上図のように画面左部にあるツールボックスから選択ツールを選択します(またはキーボードのS(またはF1)を押します)。
上図のように矩形のシェイプを選択します。 次に、フィル/ストロークダイアログを開きます。
上図のように画面上部のプルダウンメニューの"オブジェクト(O)" -> "フィル/ストローク(F)..."を実行するか、キーボードのSHIFT + CTRL + Fを押します。
上図のようにフィル/ストロークダイアログが開きます。 では、まずフィルをスウォッチにします。
上図のように『フィル』タブの[スウォッチ]ボタン()を選択します。
上図のようにスウォッチの一覧に "905" という名前のスウォッチが追加されています。 これは、塗りの種類をスウォッチに変えたことで自動的に追加されたスウォッチです。 このスウォッチに設定されている色は、もちろん元の単一色で設定した色と同じです。
右列の # は利用数、つまり、参照されている数です。 現状は 1 ですが、これは、このオブジェクトのフィルでのみで利用されているという意味です。
なお "905" という名前は自動的に割り当てられたもので、いつでも自由に変更することができます。 では早速、スウォッチの名前を変更してみましょう。
上図のようにスウォッチの名前の欄をクリックします。
上図のようにスウォッチの名前が編集可能になります。 キーボードから好きな名前を入力し、最後にEnterを押してください。
上図のようにスウォッチの名前を変更します。 今回の例では "My_Fill" という名前にしました。
では、ストロークもスウォッチに変えましょう。
上図のように『ストロークの塗り』タブの[スウォッチ]ボタン()を選択します(『フィル』タブから『ストロークの塗り』タブに切り替えるのを忘れないでください)。
上図のようにスウォッチの一覧に "911" という名前のスウォッチが追加されます。 利用数(#)はもちろん 1 です。
そして注目すべきは、フィルで利用されているスウォッチ "My_Fill" も表示されていることです。 スウォッチの一覧にはドキュメント内に存在する全てのスウォッチが表示されます。 スウォッチに、フィル用/ストローク用の区別はありません。
では、新たに作成されたスウォッチの名前を "911" から "My_Stroke" に変えましょう。
上図のようにスウォッチの名前を "My_Stroke" に変更します。
では次に、楕円のシェイプのフィル/ストロークでもスウォッチを利用してみましょう。
上図のように楕円のシェイプを選択します。
では、まずフィルからスウォッチに変更しましょう。
上図のように『フィル』タブの[スウォッチ]ボタン()を選択します(『ストロークの塗り』タブから『フィル』タブに切り替えるのを忘れないでください)。
上図のようにスウォッチの一覧に "917" という名前のスウォッチが追加されます。 利用数(#)は、みなさんの予想通り 1 です。
ではここで、楕円のシェイプのフィルを "My_Fill" に変えましょう。 つまり、たった今作られた "917" の利用をやめるということです。
スウォッチの一覧で "My_Fill" を、マウスの左ボタン()でクリックします。
上図のようにスウォッチの一覧から "My_Fill" を選択します。
上図のように楕円のシェイプのフィルの色が変わります。 矩形と同じフィルの色になりました。
ではここで、スウォッチの一覧に注目してみましょう。
上図のように "My_Fill" の利用数(#)が 2 となっています。 これは、矩形のフィルと楕円のフィルの両方から利用されているためです。 また、利用されなくなった "917" の利用数(#)が 0 となりました。
続いてはストロークです。 ストロークもスウォッチを利用しましょう。
上図のように『ストロークの塗り』タブの[スウォッチ]ボタン()を選択します(『フィル』タブから『ストロークの塗り』タブに切り替えるのを忘れないでください)。
上図のようにスウォッチの一覧に "941" という名前のスウォッチが追加されます。 利用数(#)はもちろん 1 です。
では、ストロークも矩形と共有しましょう。 つまり、"My_Stroke" に切り替えます。
上図のようにスウォッチの一覧から "My_Stroke" を選択します。
上図のように楕円のシェイプのストロークの色が変わります。 矩形と同じストロークの色になりました。
再度、スウォッチの一覧に注目してください。
上図のように "My_Stroke" の利用数(#)が 2 に、利用されなくなった "941" の利用数(#)が 0 となりました。
なお、利用数(#)が 0(ゼロ) になっても、スウォッチは自動的には削除されません。
線形グラデーション()や放射グラデーション(
)の場合は、利用数(#)が 0(ゼロ) になったグラデーションは自動的に削除されますが、スウォッチ(
)では 0(ゼロ) になってもそのまま残ります。
ではここで、スウォッチ "My_Stroke" を削除してみましょう。 利用中のスウォッチを削除するということは、スウォッチの利用をやめる、ということを意味します。
上図のように『ストロークの塗り』タブで "My_Stroke" が選択されていることを確認し、[スウォッチを削除]ボタン()を押します。
上図のようにストロークが線形グラデーション()に自動的に切り替わっています。
そして注目すべきは、グラデーションの一覧に "My_Stroke" という名前のグラデーションが作成されており、しかも利用数(#)が 2 となっていることです。
まず、ストロークがスウォッチ()でなくなったのは、利用中のスウォッチを削除したためです。
ではなぜ、単一色(
)に戻らずに線形グラデーション(
)になってしまったのでしょうか。
それは、単一色(
)では色の共有ができないためと思われます。
線形グラデーション(
)を利用すれば、グラデーションを複数のオブジェクトで共有することができます。
スウォッチ(
)を利用することで実現できていた色の共有が失われないように、単一色(
)には戻さない仕様になっている、と思います。
利用数(#)が 2 になっているのは、矩形のシェイプのストロークもこのグラデーションを共有しているからです。 確認のため、矩形のシェイプのストロークがどうなっているかを見てみましょう。
上図のように矩形のシェイプを選択します。
上図のように矩形のシェイプもストロークが線形グラデーション()に自動的に切り替わっています。
また、選択されているグラデーションは "My_Stroke" であることがわかります。
つまり、矩形のシェイプと楕円のシェイプの色の共有は失われていない、ということです。
では、再びスウォッチを利用するように設定を変更しましょう。
上図のように『ストロークの塗り』タブの[スウォッチ]ボタン()を選択します。
上図のようにストロークがスウォッチに切り替わり、スウォッチの一覧には "My_Stroke" が戻っています。 また、利用数(#)が 2 となっていることから、楕円のシェイプとの色の共有が保たれていることもわかります。
一応、楕円のシェイプのストロークがどうなっているかを見てみましょう。
上図のように楕円のシェイプを選択します。
上図のように楕円のシェイプもストロークがスウォッチ()に変化しています。
また、選択されているグラデーションは矩形のシェイプと同じ "My_Stroke" です。
このように、スウォッチを利用することで複数のオブジェクトで色を共有することができます。
ではここで、"My_Fill" の色を変更してみましょう。
上図のように『フィル』タブで "My_Fill" が選択されていることを確認し、色を赤色に変更します。 色の入力欄の R G B A にそれぞれ 255 0 0 100 を入力します。
上図のように楕円のシェイプのフィルが赤色になります。 さらに、矩形のシェイプのフィルも連動して赤色になっています。 色が共有されているわけですから、"My_Fill" を利用している他のオブジェクトの色も連動して変化したということです。
長くなってきましたので、ここで一区切りします。 続きは次の記事を参照ください。
スウォッチはカラーパレットと同じく色見本の機能ですが、カラーパレットとは異なりオブジェクト間で色を共有することができます。 なお、スウォッチに登録できるのは単一色とグラデーション(線形グラデーション / 放射グラデーションで利用)のみであり、メッシュグラデーションとパターンはスウォッチには登録できません。
スウォッチを利用するには、フィル/ストロークダイアログで[スウォッチ]ボタン()を押します。
塗りの種類をスウォッチに変えると、自動的にスウォッチが作成されます。 作成されるスウォッチの色は、元の色と同じです。
スウォッチの一覧でスウォッチの名前をクリックすることで、スウォッチの名前を変更することができます。 なお、日本語を入力することはできません。 また、空白は _(アンダースコア) に変換されます。
スウォッチの一覧には、ドキュメント内に存在する全てのスウォッチが表示されます。 フィルとストロークの区別はなく、どちらで利用中のスウォッチも表示されます。
スウォッチの一覧では、スウォッチを選択することができます。 それにより、他のオブジェクトとスウォッチを共有することができます。
[スウォッチを削除]ボタン()でスウォッチを削除することができます。
スウォッチを削除すると、強制的に線形グラデーションに切り替わります。
そのおかげで、複数のオブジェクトでの色の共有を保てます。